「効果的な」人材開発を!ポイントや人材開発支援助成金制度について解説
昨今、目にする機会の増えた「人材開発」という言葉。なんとなく「従業員を育てること」だと推測できますが、人材育成とはどのような違いがあるのでしょうか。また、どのように人材開発を行うべきなのかわからないという担当者の方も少なからずいらっしゃるのではないでしょうか。
本記事では、効果的な人材開発やそれを支援する人材開発支援助成金制度について解説します。
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人材開発とは
人材開発とは、社内で開催される研修や外部の講習などを通して、従業員の知識やスキル、仕事への意欲などを向上させることです。特に持っている知識をうまく活用できていない従業員がいる場合は、人材開発を行うことで「持っているだけの知識」を「業務で活用できる知識」へと成長させ、その従業員が目の前の課題を解決できるように導きます。
人材開発の目的は、従業員の知識やスキル・仕事への意欲などを向上させることで仕事の質を高め、「企業戦略を実現」させることです。
人材開発と人材育成の違い
人材開発と似たような言葉に「人材育成」があります。
人材開発が「会社の課題を解決する」「従業員が既に持っている知識やスキルを伸ばす」ために教育を行うことであるのに対し、人材育成は「従業員のキャリア形成をする」「従業員に新しい知識やスキルを習得してもらう」ために教育を行うことを指します。
そのため人材開発は比較的「短期間かつ集中的」に行われますが、人材育成は「長い時間をかけてゆっくり」と行われることが多い点が特徴です。
人材開発と人材育成は根本的な目的が異なるため、それぞれの対象者や具体的な研修・講習内容も異なります。
効果的な人材開発手法
株式会社リクルートマネジメントソリューションズが実施した、企業の人材開発部門の責任者を対象とした調査によると、人材開発手法ごとの満足度は以下のようになっています。
【全体的に効果的な人材開発手法】
①ケース・スタディ
実際に起きた多様な事例(ケース)を教材として、最適な解決方法を考え、類似した事態への対処法を身につける手法です。座学だけでは得られない、現実の問題解決に結びつけるスキルを養うことができます。
多くの事例を疑似体験することで効率的に問題解決力・分析力などのビジネススキルを身につけることができるため、全体的に満足度が高くなっています。
②360度フィードバック
フィードバックを行う際は上司から部下へ行うことが多いかと思いますが、360度フィードバックでは上司だけではなく、同僚や部下からもフィードバックを受けることができるため、多角的な視点での評価を得ることができます。
評価の客観性が高まることで納得感のある評価になりやすいため、全体的に満足度が高い結果となります。
実際にアサヒビール株式会社などで、360度フィードバックが管理職育成に活用されています。
【企業の規模により効果が異なる人材開発手法】
①アセスメント研修
第三者によって従業員の能力や性格、意欲などを評価することをアセスメント研修と言います。社内の人員のみで実施する人事評価に比べて、より客観性のある評価が期待できるといわれています。
特に従業員が1,000名以上の企業において高い満足度を得ている手法です。
③アクションラーニング
アクションラーニングとは、組織が実際に直面している課題に対し、グループで解決策を考えるという過程から学びを深めるより実践的な学習方法です。グループディスカッションを行い解決策を導くのではなく、質問とその回答のみで会議を進め、解決策を見つけるという方法を採用しています。その特徴的な進行方法から、質問会議とも呼ばれています。
会社の規模にかかわらず満足度は高いですが、特に従業員が1,000名未満の企業において高い満足度を誇る結果となっています。
下記の記事で、アクションラーニングについて解説していますので、ご参考になれば幸いです。
人材開発のポイント
ここでは、実際に人材開発を行う際に気を付けるべきポイントを2つ紹介します。
①現状把握を行う
まず自社の経営戦略において必要な人材にどのような知識や考え方を持っていてほしいかを具体的に考えておく必要があります。人材開発では社内の人材を育成するだけでなく、社外から中途採用で必要な人材を集めることもあります。
②知識と実務との接続を強化する
座学研修などで従業員に知識を増やしてもらうこと自体は非常に重要ですが、知識を詰め込むだけでは従業員の成長は期待できません。知識を得た後、その知識を活用する場を設けることで、実務をこなす過程で身につけた知識を活かせるようにしましょう。
③従業員の自発性を高める
従業員が前向きに成長したいと思っていない状態では、人材開発の効果は薄れてしまいます。高い効果を出すためには、従業員本人のやる気が必要不可欠です。
そこで、従業員のやる気を高める環境整備を行う必要があります。具体的には、評価制度の見直しや資格取得支援制度の充実、従業員のスキルアップに対する報酬などがあります。このように従業員のやる気を引き出す環境整備を行い、人材開発の効果を高めましょう。
人材開発支援助成金制度とは何か
日本企業の人材開発にかける費用は、国際的に見て少ないと言われています。実際に、ある時期の日本企業のOFF-JT(社内外を問わず職場を離れて受講する研修)への投資は、アメリカの0.1%しかないと言われています。
人材開発に大きな予算を割くことが難しい…とお悩みのときこそ知っていただきたいのが、人材開発支援助成金制度です。
人材開発助成金制度とは、雇用する労働者のキャリア形成を効果的に促進するため、人材開発に取り組む事業主に対し、厚生労働省が訓練経費や訓練期間中の賃金の一部助成を行う制度です。
従業員へ研修を実施する際に人材開発支援助成金制度を利用すれば、最大で「研修経費の60%の助成金」+「1人1時間当たり960円の賃金助成金」が支給されます。
人材開発に取り組む企業には、ぜひ知っていただきたい制度です。
人材開発支援助成金制度については以下の記事で詳しく解説しています。ぜひご参照ください。
まとめ
本記事では、人材開発の意味から有効な人材開発手法や人材開発を行う企業にとって有用な人材開発支援助成金制度について解説しました。
これからますます変化が激しく、先行きが不透明な時代に突入すると言われています。そんな時代で生き残るためには、従業員のスキルアップは必要不可欠です。
本記事で紹介した有効な人材開発手法や人材開発支援助成金制度などを活用して、これからの時代を担う人材を育成していきましょう。
▼ 関連資料
参考資料
独立行政法人 労働政策研究・研修機構「人材育成と能力開発の現状と課題に関する調査」