人材開発支援助成金制度について~社員教育のための企業支援~
DX化の加速により、近いうちにIoT、AIやビックデータを活用した技術革新である第4次産業革命が起こると予想されています。それに伴い2020年のダボス会議(世界経済フォーラムの年次総会)では、第4次産業革命に伴う技術変化に対応するために、「2030年までに全世界で10億人により良い教育、スキル、仕事を提供する」というリスキリング革命が発表されました。これにより世界中の国々が人材の再教育に注目を寄せていることがわかります。日本も例外ではなく、日本政府もリスキリングやリカレント教育を促進するために、リスキリングやリカレント教育を実施する企業に支援を行っています。
そこでこの記事では日本政府がリスキリングやリカレント教育に対して行っている企業向けの支援である人材開発支援助成金制度について説明します。
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人材開発支援助成金について
雇用する労働者のキャリア形成を効果的に促進するため、リスキリングやリカレント教育に取り組む事業主に対し、厚生労働省が助成を行う制度です。
リスキリングやリカレント教育について詳しく知りたい方は、あわせてこちらの記事もお読みください。
2022年4月に新しいコースの追加や助成額に変更があり、今後の発展にも大きく期待できそうです。
人材開発支援助成金がもらえるコース
人材開発支援金制度には合計8つのコースがありますが、ここでは社員教育をどのように・誰に行うのかで分類し、代表的な4コースについて説明します。
労働時間中に社員教育する場合
労働時間中に社員教育を行いたい場合に利用できるコースは2つあります。
①特定訓練コース
特定訓練コースは、労働生産性の向上に資する訓練、若年者に対する訓練など、効果が高い10時間以上の特定の 訓練や、 OJTとOFF-JTを効果的に組み合わせた訓練として認定を受けた場合に助成するコースです。特定訓練には以下のような種類があり、該当する訓練内容を受講した場合、特定訓練コースの助成金を受給できます。
また特定訓練コースの助成金は以下の表にまとめました。
②一般訓練コース
特定コース以外で職務に関連した専門的な知識及び技能を習得させるための職業訓練を助成するコースで、実施する企業に助成金が支給されます。
一般訓練コースの対象となる職業訓練は、OFF-JTでかつ実訓練時間が20時間以上である必要があります。
一般訓練コースの助成金は以下の表にまとめました。
【Tips】生産性要件とは
企業の生産性向上を支援するために、生産性を向上させた企業が上記の助成金を利用する際に、その助成額・助成率の割増支給を行っています。割増支給のための条件が生産性要件です。
生産性要件の具体的な中身は訓練開始日の前年度とその3年後の会計年度の生産性を比べて、6%以上の伸びがあることです。
ここで、生産性の計算式は以下のようになります。
「生産性」= (営業利益+人件費+減価償却費+動産・不動産賃借料+租税公課)÷ 雇用保険被保険者数
生産性要件を満たしている場合、大幅な割増支給となるので、ぜひ申請をしておきましょう。
休暇を与え社員教育する場合
休暇を与え、社員教育を行う場合には、教育訓練休暇等付与コースが利用できます。
教育訓練休暇等付与コースは、業務命令ではなく自発的に教育訓練や各種検定を受講する機会を確保するための制度で、事業主が申請することで、休暇と助成金が一般労働者に支給されます。
教育訓練休暇等付与コースの内容は、以下の3つに分類されます。
また教育訓練休暇等付与コースの各助成金は以下の表にまとめました。
非正規雇用者に教育する場合
今までのコースとは異なり、非正規の有機契約労働者に対して職業訓練を行う場合、特別育成訓練コースが利用できます。
特別育成訓練コースの助成金は以下の表にまとめました。
人材開発支援助成金の具体例
全体的に数字が多くてわかりにくいので、ここで具体例を一つ示します。
企業詳細
・中小企業(従業員10名)
・利用したコース:特定訓練コース(若年人材育成訓練)
・生産性要件:満たさない
外部機関による訓練の詳細
・OFF-JT訓練時間:18時間
(OFF-JT訓練時間が20時間以上になると、賃金助成に限度額が設けられます。)
・一人当たりの外部研修の費用:36,000円
特定訓練コースを選んだ場合、経費助成率は45%、賃金助成は1時間760円です。この条件で、人材開発支援助成金制度を利用すると、このようになります。
まとめ
これから社員に対してリスキリングを行おうとしている、または社員がリカレント教育を行いたいと思っているという企業にとって、これらの支援は非常に大きな手助けになります。ぜひ人材開発支援助成金を利用して、金銭的・時間的な負担を減らしつつ、従業員のスキルアップを図りましょう。
▼ 関連資料
参考資料
厚生労働省:令和4年度版パンフレット(特定訓練コース、一般訓練コース)詳細版(R4.8.1~)