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【労働者派遣法改正の歴史】1986年〜2012年までの改正について解説

労働者派遣法は労働者の雇用を守るため、その制定から今日に至るまで多くの法改正が行われてきました。しかし、どのような意図を持って改正されたのか、それぞれの改正内容を知っている方は多くないのではないでしょうか。本記事では、時代に合わせて変化してきた労働者派遣法について、施行されてから2012年までの間にどのような変化があったのか改正内容についてご紹介します。


目次[非表示]

  1. 労働者派遣法とは?
  2. 改正の内容
    1. 【1986年】 派遣可能業務が13から16に
    2. 【1996年】 派遣可能業務が16から26に
    3. 【1999年】 ネガティブリスト方式と派遣期間制度の導入
      1. 派遣可能業務のリストから派遣禁止業務のリスト化へ
      2. 派遣期間制限の導入
    4. 【2000年】 紹介予定派遣が可能になる
    5. 【2004年】 派遣期間の変更
    6. 【2006年】 条件付きで医療関係業務への派遣解禁
    7. 【2007年】 製造業務の派遣期間の上限変更
    8. 派遣可能期間・派遣可能業務の変化のまとめ
    9. 【2012年】 規制の強化
      1. 日雇い派遣の原則禁止
      2. グループ企業内での派遣規制
      3. 受け入れる派遣労働者の規制
      4. 派遣会社のマージン率公表
  3. まとめ


労働者派遣法とは?

労働者派遣法とは、労働者派遣事業に関して適正な運営や派遣労働者の保護をするための法律です。1986年に施行されてから、時代に合わせて何度も改正が行われてきました。労働者派遣法の正式名称は、「労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律」で、2012年に“派遣労働者の保護”という言葉が加わりました。

労働者派遣とは、大まかに言うと人材を欲している企業(派遣先)に人材を抱えている企業(派遣元)が人材(労働者)の提供をすることです。派遣について詳しくは、以下の記事をご覧ください。

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改正の内容

労働者派遣法は、1986年に施行されてから現在に至るまで様々な改正が行われています。ここでは、これまでにどのような改正が行われてきたのかそれぞれの改正内容について順番にご紹介します。


【1986年】 派遣可能業務が13から16に

労働者派遣法が制定された当初、労働者派遣業は専門知識が必要な13種類の業務に限られていました。しかし、施行後すぐに16種類の業務に拡大され、具体的には以下の業務が加わりました。また、派遣期間の上限は基本的に1年とされていました。



【1996年】 派遣可能業務が16から26に

1996年には派遣可能業務がさらに拡大され、新たに10種類の業務が加わって26種類の業務が派遣可能業務となりました。具体的には以下の業務が改正によって追加されました。



【1999年】 ネガティブリスト方式と派遣期間制度の導入

派遣可能業務が徐々に拡大していき、可能業務を定めるのではなく禁止業務を定めるように改正されました。また、これに関連して派遣期間の制限も導入されるといった変化がありました。これらのことについてそれぞれご紹介します。


派遣可能業務のリストから派遣禁止業務のリスト化へ

これまで派遣可能業務は、可能な業務のみを明記するポジティブリスト方式をとっていました。しかし、1999年の改正によって、派遣禁止の業務のみを明記し禁止されていない業務は原則として派遣を行うことができるネガティブリスト方式になりました。

労働者派遣を禁止する具体的な業務は以下のようになっています。

【派遣禁止業務】
・港湾運送業務
・建設業む
・警備業務
・病院・診療所での医療業務(紹介予定派遣は可)
・弁護士、公認会計士、税理士等の士業
・建設士事務所の管理建築士など他の法令で禁止されている業務
・人事労務関係で労使協議の際、経営者側の直接当事者として行う業務
・物の製造業務


派遣期間制限の導入

派遣期間について、1996年に定められた26種類の派遣可能業務においては3年間新たに追加された派遣可能業務においては最長1年間の期間制限が設けられました。


【2000年】 紹介予定派遣が可能になる

2000年には、新たに紹介予定派遣という派遣方法が可能になりました。紹介予定派遣とは、派遣先企業に直接雇用されることを前提とした派遣のことであり、最大6ヶ月派遣として働き、その後双方の合意により直接雇用に移るというものです。

紹介予定派遣について詳しくは、以下の記事をご覧ください。

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【2004年】 派遣期間の変更

1999年に派遣期間制度が導入され、1996年に定められた26種類の業務においては3年間、それ以外は1年間となっていましたが、今回の改正により派遣期間は以下のようにそれぞれ拡大されました。また、派遣禁止業務とされていた「物の製造業務」は、派遣期間1年の制限下で可能になりました。


改正前
改正後
26業務
3年間
無制限
それ以外
1年間
3年間
物の製造業務
禁止
1年間

さらに、この年には「紹介予定派遣」に限り医療関係業務への派遣が認められました。


【2006年】 条件付きで医療関係業務への派遣解禁

2006年の改正によって、医療関係業務の一部で派遣が可能になりました。具体的には以下の業務において、派遣可能となりました。

・産前産後休業・育児休業・介護休業中の労働者の業務
・僻地での業務


【2007年】 製造業務の派遣期間の上限変更

​​2007年の改正では、物の製造業務に関する派遣期間が延長されました。物の製造業務は、2004年の改正で派遣禁止から1年間の上限で派遣可能となりましたが、今回の改正で3年間に上限が延長されました。

改正前
2004年の改正
2007年の改正
禁止
1年間
3年間


派遣可能期間・派遣可能業務の変化のまとめ

これまでの改正によって、派遣可能業務や派遣可能期間の規制が緩和されてきました。2007年までの改正でどのような変化があったのか改めて以下の表にまとめています。


派遣可能業務
派遣可能期間
1986年
13種類から16種類になる
1年間
1996年
16種類から26種類になる
1999年
ポジティブ方式からネガティブ方式になる

26業務は3年間
それ以外は1年間

2004年

26業務は無制限
それ以外は3年間
物の製造業務は1年間

2006年
医療関係業務の一部が可能になる
2007年

物の製造業務は3年間


【2012年】 規制の強化

2007年まで、労働者派遣は規制の緩和や社会のニーズによって広がってきましたが、それに伴い様々な問題が生じました。そのため2012年には、派遣労働者を保護するための改正が行われました。


日雇い派遣の原則禁止

日雇い派遣は、責任の所在が不明確であり派遣労働者の職の安定に繋がりにくいことから、雇用期間が30日以内の日雇い派遣は原則禁止になりました。しかし、以下のいずれかに当てはまる方は日雇い派遣が可能です。


グループ企業内での派遣規制

グループ企業内において派遣元会社があり、派遣先の大半がグループ会社の場合、派遣元の属するグループ会社に派遣する派遣労働者の割合は、60歳以上の定年退職者を除き全体の8割以下にすることが必要になりました。


受け入れる派遣労働者の規制

同一の労働者を直接雇用から派遣にすることで人件費を削減するということが生じないよう、労働者を保護する目的で、60歳以上の定年退職者を除き、自社で直接雇用していた労働者を離職後1年以内に派遣元を介して、派遣社員として受け入れることが禁止されました。


派遣会社のマージン率公表

派遣元会社に対して、書類やインターネットを通じて派遣料金と派遣労働者に支払われる賃金の差額(マージン率)等の情報を公表することが義務化されました。


まとめ

労働者派遣法は、1986年に施行されてから2007年の改正まで規制が緩和されていく方向に変化してきました。しかし、2012年の改正からは労働者を保護し労働者の職業を安定させるため、規制が強化される方向に変化しました。時代の変化に合わせて、法律も規制を強化・緩和させることで対応していることがわかります。

本記事では、2012年までの改正についてご紹介しましたが、それ以降の改正については以下の記事で詳しくご紹介しています。労働者派遣法の歴史や規制の強化・緩和の傾向などの理解にあわせてご覧ください。

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